パブリックコメントの問題点 東大阪市役所
パブリックコメントの問題点 東大阪市役所
パブリックコメントの問題点として、よく言われるのが、同一意見の大量投稿だ。
大量投稿問題は、かなり前から指摘をされ、啓発されてはきているものの、いまだに社会問題となっている。
2020年の香川県ネット・ゲーム依存症対策条例のパブコメが有名だ。
パブコメ問題の東大阪市役所版としては、「パブコメ全体を削除してしまう」という問題がある。
行政手続法の規定どおりに運用すれば何も問題は無いのであるが、地方独自の運用が可能となっているため、恣意的に、市役所が気に入らない意見が含まれるパブコメは市民の目に触れないよう、(個々の意見ではなく、パブコメ全体が)無かったことにしてしまっているのである。
1.概要
東大阪市には「パブコメ公表後、6カ月経過後、その公表をやめることができる」という趣旨の決まりがある。
この決まりにより市のホームページから完全に削除されたパブコメがある。
他の残りのパブコメは、市の「結果公表」のページに掲載され続けている。このため、気が付かなければ、何も問題はないかのように見える。
この決まりは一般に公表されておらず、市が、任意の パブコメの 全体 (一部の意見ではなく、パブコメ全体である)を恣意的に無かったことにできてしまう。
大阪府庁では、全てのパブコメを一律に概ね3年後にホームページから削除する。
このように全てを平等に取り扱うのであれば、恣意性は無い。
しかし、東大阪市役所では、一部のパブコメだけが削除されてしまうのである。
この「東大阪市第3次総合計画」の「基本構想」や「基本計画」のパブコメは、市のホームページから完全に削除されており、まるで、そのパブコメが無かったかのようになってしまっている。
「実施計画」はパブコメを実施しなかった。
市民の声の公表(令和2年度) に投稿した結果は次のとおりです。
パブリックコメントの削除について
ご意見
東大阪市第3次総合計画基本構想(以下「基本構想」という。)に関するパブリックコメントが、東大阪市のホームページから削除されています。(1)市の考え方の公表の期間の根拠は、東大阪市パブリックコメント手続実施要領(以下「要領」という。)第4条第1項「また、市の考え方の公表の期間については、半年間は行うものとする。」だと思います。この規定を設けた趣旨を教えてください。また、この規定は公表の期間を定めただけであって、公表を取りやめることができるとは規定していません。公表を取りやめることができると定めた根拠を教えてください。(2)要領は、東大阪市パブリックコメント手続実施要綱(以下「要綱」という。)第11条を根拠に設けられました。このため、要領において、要綱に定めがある事項の効力を消滅させる規定をすることはできません。要綱第8条において「市の考え方を公表しなければならない。」と定めています。この公表は、要綱第1条「市政運営における公正性の確保及び透明性の向上を図る」という規定を鑑みると、一時的な行為ではなく、期間の定めのない継続した行為であると解釈するべきです。継続させなければならない公表を、要領の規定において期間限定にしてしまうことは、要綱の目的に反していると思いますが、いかがお考えになりますか。(3)東大阪市のホームページでは、基本構想に関するパブリックコメントは削除されているにも関わらず、他のパブリックコメントは掲載され続けています。削除する場合と掲載を続ける場合との違いが分かりません。基本構想のパブリックコメントの削除理由及び掲載を継続しているパブリックコメントの継続理由を教えてください。(4)基本構想に関するパブリックコメントの市の考え方の公表期間が半年間であった理由を教えてください。基本構想の有効期間が終わる令和12年度末まで、市の考え方も公表し続ければ良いと思いますが、なぜそうしないのでしょうか。(5)多様な市民の意見を知ることは、市民間の相互理解を深めます。このため、削除せずに公表を継続することが有益であると思いますが、市としてはいかがお考えになりますか。また、削除したことにより、市民にどのようなメリットがもたらされたかを教えてください。(6)要領第4条第1項から「また、市の考え方の公表の期間については、半年間は行うものとする。」の文言を削除し、また、基本構想に関するパブリックコメントを市のホームページに掲載してください。
回答:市政情報相談課
(1)要領第4条第1項の規定は、要綱第1条の目的を果たすために半年間という最低限の公表期間を確保するために設けております。この規定により、半年間の公表期間を確保していれば公表を取りやめることができると解釈することは可能ですが、その旨を積極的に定めているものではございません。(2)要領第4条第1項の規定は、最低限の公表期間を定めたものであり、公表期間を限定するという趣旨のものではございません。(3)市ウェブサイトへのパブリックコメントの結果公表の期間につきましては、実施担当部署の判断で行っているため、公表期間に違いが生じているものと思われます。(5)公表を継続することの有益性について市として否定するところではございません。一方で、同一案件名のパブリックコメントの公表が続くことによる混同を防ぐ目的で、削除する方が好ましいケースも考えられます。(6)公表期間の定めを含め、要綱・要領の見直しをすることの必要性について検討してまいります。
回答:企画課
(3)本構想のパブリックコメントについては、基本構想が令和元年12月に議決を経て確定したことから、その役割を終えたものとして、公表期間終了後に削除いたしました。(4)基本構想のパブリックコメントについては、令和元年11月20日の公表から、基本計画のパブリックコメント公表(令和2年7月6日)までの間、市ウェブサイトにて公表しておりました。パブリックコメントにて寄せられたご意見を踏まえて基本構想(素案)を一部修正したほか、ご意見は今後の施策立案・検討の参考とさせていただきますので、公開の継続は考えておりません。(6)国立国会図書館が公的機関等の過去のウェブサイトを収集・保存しており、本市ウェブサイトについても一定のタイミングで収集され、長期間にわたり保存されています。本市ウェブサイトにて削除された場合でも、国立国会図書館インターネット資料収集保存事業(WARP)において、概ねすべてのページの公開時の掲載内容を確認することができます。
●東大阪市第3次地球温暖化対策実行計画(区域施策編)も削除された。
2.経緯
東大阪市役所は、平成31年(2019年)3月付けで「スポーツ推進計画」を策定した。
この策定に先立ち、市はパブリックコメントを実施した。
今は跡形もなく削除されているのだが。
平成30年12月から平成31年1月まで意見の募集を行っており、私はこれに意見を投じた。
市は、「市の考え方」(パブコメへの回答)を平成31年2月20日から令和元年8月31日までウェブサイトに掲載し、その後、削除した。
市役所は「WARPを使えば閲覧できる」と言う。当該パブコメの存在を知っている場合は、WARPで閲覧できる。しかし、存在を知らなければ他の市民の多様な意見を知ることはできない。
スポーツ推進計画関連の文書を次のURLからダウンロードできるようにしました。
3.根拠
東大阪市役所は「東大阪市パブリックコメント手続実施要綱」を策定し、ホームページで公表している。
東大阪市役所パブリックコメント(意見募集)の目的
ホームページでは公表されていない「東大阪市パブリックコメント手続実施要領」もある。つまり「要綱」と「要領」の2個の定めがある。
要綱が上位で、要領が下位に位置付けられる。
この要領の第4条第1項に「市の考え方の公表の期間については、半年間は行うものとする」と定められており、これを根拠に、何の理由もなく、任意のパブコメを、半年間公表後に削除できることになっている。
東大阪市パブリックコメント手続実施要領 2/2
そして、この要領を根拠に、実際、「スポーツ推進計画」のパブコメ「市の考え方」を削除し、このパブコメが無かったかのようにしている。
市の職員は慎重に言葉を選んでおり「削除」という言葉を使わないが、ホームページ用サーバーに与えるコマンドはdelete又はremoveであるので、そういう意味では削除したと言える。
4.私の対応
私は「市民の声」で、公開するように意見を提出した。「市民の声の公表(令和元年度)」の「パブリックコメントの公開」のとおりである。
表題:パブリックコメントの公開
ご意見
平成30年12月から平成31年1月まで意見の募集を行っていたパブリックコメント「東大阪市スポーツ推進計画(案)について」の実施結果の公表が東大阪市のホームページから削除されています。削除した理由を教えてください。本パブリックコメントには、障害者が実施するスポーツに言及した意見及びそれへの回答などがあり公益性があると考えますので、削除することなく公開してください。
回答:スポーツのまちづくり戦略室
本件パブリックコメントは、東大阪市パブリックコメント手続実施要領に定める公表を必要とする期間を踏まえ、平成31年2月20日から令和元年8月31日までウェブサイトに公表し、適切に処理しております。また、本件パブリックコメントを含め寄せられたご意見等は、当室において今後の施策運営の参考にさせていただきますので、公開の継続は考えておりません。
「適切に処理しております」とは、ホームページから削除しました、ということであり、それが適切な行為であったと述べているのである。
つまり、決まりがあるので、そのとおりにしました。ということである。でも、何故この案件に限って?という説明を敢えてしていない。恣意的に運用を行うことが当然ということだ。
その後、私は、行政不服審査法(平成26年法律第68号)の存在を知る。
総務省が作成した資料には「原則、全ての行政分野が対象」と書かれてあったため、本件も該当すると(私が勝手に思い込み)考え、東大阪市長あて、審査請求を行った。
私が提出した審査請求の「趣旨」は次のとおりであった。
パブリックコメントの結果の公示を取りやめたことは違法である。行政手続法の目的を考えると、東大阪市パブリックコメント手続実施要領第4条第1項「また、市の考え方の公表の期間については、半年間は行うものとする。」は実効上意味は無い。意味の無い事柄を定めることは不適切であるため、削除すべきである。「東大阪市スポーツ推進計画(案)のパブリックコメントで寄せられた意見とそれに対する本市の考え方」を、法の定めに従い、公示すべきである。
結果から言えば、市からは、本件は行政処分ではないとのことで、却下の裁決がなされた。
5.要領第4条第1項
要領第4条第1項は次のとおりである。
(意見の処理)第4条 要綱第8条第2項に規定する「市の考え方の公表」については、提出された意見を考慮して計画等の意思決定を行った後、早急にしなければならない。また、市の考え方の公表の期間については、半年間は行うものとする。
6.審査請求の理由
以下は、私が行った審査請求の「理由」である。
(1)行政手続法の目的
パブリックコメントの結果の公示のあり方を定めている行政手続法(平成5年法律第88号)(結果の公示等)第43条には、「公表の期間」(要領(意見の処理)第4条第1項)や「公表を必要とする期間」(東大阪ス戦第1141号)に関する定めは無い。
定めが無いのであるから、法(目的等)第1条の趣旨に従うべきである。
公示を取りやめることは、国民の権利利益の保護に資することにはならず、行政運営における公正の確保がなくなり、また、透明性(行政上の意思決定について、その内容及び過程が国民にとって明らかであることをいう。)の向上に反する。
法の目的を考えると、公示を継続しなければならないのであるから、要領第4条第1項に「また、市の考え方の公表の期間については、半年間は行うものとする。」と定めてはいるものの、この定めには実効上意味は無い。また、半年間の後に公示を取りやめることができると解釈・運用することは違法である。
違法性があり、かつ回答(東大阪ス戦第1141号)にあるような解釈・運用の誤りにつながるため、この定めは削除すべきである。
(2)要領に定める公表の期間
要領第4条第1項の「また、市の考え方の公表の期間については、半年間は行うものとする。」は、公表の最低限の期間を規定したものである。しかしながら、この期間を過ぎた後の取り扱いについて、非公表とする、または非公表にできる、と規定してはいない。公表の最低限の期間を規定したからといって、非公表にして良いとは明記されていない。
非公表とすることは極めて重大な取決めである。このため、非公表にするのであれば、東大阪市パブリックコメント手続実施要綱や要領にしっかりとその旨を明記して取り決めるべきである。明記しないまま、論理的・暗黙的に推論できるからとして、非公表とするような解釈・運用はできない。もっとも、法の目的を考えると、一定の期間(半年間)を経過したとしても、非公表となることはあり得ない。
市の要綱・要領には非公表が明記されていない。このため、要領の条文の解釈は、要綱(目的)第1条の趣旨に従うべきである。この第1条では、市役所が「説明責任を果たすことで、市政運営における公正性の確保及び透明性の向上を図ることを目的」としているのであるから、公表を継続し続けることが要領第4条に適用されると解釈すべきである。
(3)法第43条第3項の解釈
スポーツのまちづくり戦略室の電話での説明は、「最低限とされる半年間は公表を行った。半年後については、公表を止めたというのではなく、本来のあり方に戻ったのである」という趣旨であった。
この説明から、おそらく、法第43条第3項に定める「正当な理由があるとき」を、要領第4条第1項の「公表の期間」の根拠と考えていると推測される。
法第43条第3項における「正当な理由があるとき」とは、個別具体的な提出意見を取り扱うときであって、市が一律の取扱いを定めているとき(市が要領第4条第1項で公表の期間を定めていること)ではない、と解釈すべきである。
法第43条第3項における「当該提出意見の全部又は一部」とは、全ての提出意見を見た場合におけるその全部、を示さない。個々の提出意見を見た場合におけるその個別の意見における全部又は一部である。
仮に、市が一律の取扱いを定めていることが「正当な理由」であると解釈したならば、本審査事件のように、個別具体的な提出意見に対する正当な理由が無いまま、パブリックコメント案件に含まれる全ての意見の公示を取りやめることになってしまう。結果として、特段何の問題も無い意見も含まれる形で全てが公示されなくなってしまい、不都合である。
スポーツのまちづくり戦略室は、根拠となる要領の該当条文の箇所を引用して通知しただけである。個別具体的な提出意見に対して非公表とすることの理由を示さずに、市民の全ての意見を非公表にしたことは違法である。
以上
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
本件や、ラグビー事業など、スポーツ関連施策には問題があります。