東大阪市第3次総合計画 人権尊重に目標値50%を設定

東大阪市第3次総合計画 に対する評価

東大阪市第3次総合計画
東大阪市役所は、2020年7月「東大阪市第3次総合計画」を策定しました。
以下、この計画に関する評価を行います。


東大阪市第3次総合計画 に対する評価 目次

  1. モノづくりのまちについて
  2. ひとが集まるまちについて
  3. 人口の目標について
  4. 人権尊重のまちづくりに50%という目標値を設定
  5. 外国人と日本人とが暮らしやすいまちだと思う割合
  6. 連携協定について
  7. 働く場の創出施策の指標として就業率を使用
  8. 65歳以上の要介護認定率
  9. 危機や災害に強く安心して暮らせるまちであると思う市民の割合
  10. きちんと編集をしていない
  11. 目標値に対する意見
  12. 行財政改革の推進として選択と集中の方針

 特に、「4.人権尊重のまちづくりに50%という目標値を設定」は、役所としては致命的です。


1.モノづくりのまちについて

東大阪市は「ものづくりのまち」を標榜していますが、その標榜をする根拠は、どこまで真面目に考えているのでしょうか?


●記載箇所
 2章 計画策定の背景 第1節 東大阪市の特徴 3.モノづくりのまち(5ページ。画像データ)
市内の製造業の事業所密度は全国第1位であり、モノづくり企業の集積地となっています。

●計画での記述(文字データ)
 市内の製造業の事業所密度は全国第1位であり、モノづくり企業の集積地となっています。


●補足
素案(当初の案。現在は削除されている)では「製造業事業所数」を指標にしていましたが、市は、その後、完成版のとおり修正し、「事業所密度」を指標にしました。

●疑問点
 10年後、仮に事業所密度の順位が下がった場合、「ものづくりのまち」の標榜をやめるのでしょうか?
 それとも、再度、都合の良い別の指標を探し出して示すのでしょうか?

●問題意識
 事業所密度が一位である。ゆえに、モノづくりのまちを標榜する。という論法だと、仮に10年後に一位でなくなった場合、標榜する根拠が無くなり、標榜を撤回せざるを得ないことになります。
 10年後、仮に別の指標に切り替えた場合、市役所の標榜のあり方に対する信頼性が無くなります。
 「10年後も事業所密度は第1位である」という考え方ならば、その論拠を示すべきです。
 仮に何かの指標で一位にならなかったとしても、モノづくりのまちであり続けるための考え方を示すべきです。
 事業所密度が高いことは中小企業が多いことを示しますが、大企業化せず、中小の規模を維持し続けるのであれば、経営の不安定性が継続するのではないでしょうか?
 むしろ、経営統合を進めること(結果として事業所数は少なくなること)の方にメリットがあるようにも考えられます。
 なので、事業所密度といった指標は、まったく重要ではなく、意味は無いのです。

 上記のような問題意識は誰でも持ちます。経営のプロであれば、なおさらでしょう。
 事業所の数が多いか少ないかは、経営の結果、派生して生じる現象です。事業所の数を増やすこと自体を目的として経営を行うことはあり得ません。
 誰でも持ちうる疑問を放置し、説明責任を果たすことなく、そのまんま計画に盛り込んでいるのが問題なのです。
 モノづくりをするには、科学的・合理的な思考が必要ですが、東大阪市役所には合理的思考力が欠落していることを露呈してしまっているのです。

 計画というものは、若い人を読者対象にすべきです。
 若い人の勉学に資するためにも、「10年後も事業所密度は第1位であり続ける」「中小企業が多いことに経営不安が残る」などに対して合理的で丁寧な疑問解消の説明が必要です。
 東大阪市役所からのメッセージでは、なんの勉強にもなりません。
 若い人向けを意識して、幼児向けキャラクターを多用し、「感動」を売りものにするなど、まさに、ただの、プロパガンダです。

 この件に関して深掘りしたのが次の記事です。


2.ひとが集まるまちについて

●記載箇所
 2章 計画策定の背景 第1節 東大阪市の特徴 6.ひとが集まるまち(7ページ。画像データ)
本市には、(中略)近隣市町村を含めた地域全体の経済活動を支え、牽引する役割を発揮することが求められています。

●計画での記述(文字データ)
 本市には、(中略)近隣市町村を含めた地域全体の経済活動を支え、牽引する役割を発揮することが求められています。

●疑問点
 誰から、何故、求められているのか?

●問題意識
 この疑問に対する回答は、「基本構想」版のパブコメに書かれてありました。
 しかし、そのパブコメは市のホームページから削除されてしまっています
 なので、私は回答を知っていますが、他の一般市民の立場からすれば不明のままです。
 市役所に問い合わせねば内容の理解ができない。そんな計画で良いのでしょうか。
 東大阪市役所がホームページからパブコメを削除する問題については次のページに書いています。


3.人口の目標について

●記載箇所
 3章 めざす将来像 第2節 人口の目標(23ページ。画像データ)
令和12(2030)年に約48万人の人口をめざします。

●計画での記述(文字データ)
 令和12(2030)年に約48万人の人口をめざします。

●意見
 人口は減ることが見込まれているため、人口数を現状維持する(約48万人を目指す)政策は、実質的に人口増加策を講じることになっています。
 これまで、国や自治体は、人口増加のため、多くの無駄な施策を行ってきました。人口増加策を講じても効果が無いことは明らかです。
 これまでの施策の経験を鑑みると、人口増加策ではなく、少ない人口でも住みやすいまち、を目指すのが正しい政策です。
 日本人の人口は伸びないのが現実です。
 なので、全国でヒトの奪い合い合戦をすることは愚かであることは明らかです。
 過疎地は消滅の危機があるにも関わらず、東大阪市だけがヒトが増えれば良いとする政策は、日本国全体の視点から見れば、不当です。

 市役所が所管する事業だけでは人口を増加させることはできません。このことは誰が考えても明らかです。にも関わらず、敢えて、市役所の守備範囲を超えた目標を掲げるところが精神論であり、合理的思考をしていない証拠です。


4.人権尊重のまちづくりに50%という目標値を設定

●記載箇所
 分野別/施策NO.1 すべての人の基本的人権が守られる地域社会の形成 成果指標(45ページ)
すべての人の基本的人権が守られる地域社会の形成 成果指標

●疑問点
 そもそも人権尊重に指標を設けることができるの?
 50%だと人権が尊重されていると言えるの?

●問題意識
 人権尊重の程度を指標化することへの問題提起は、私は、次のとおりパブコメで行いました。

●私のパブコメ意見

「人権尊重のまちづくりが進められていると感じる市民の割合」を適切な指標に変更してください。
【理由】
(1)「現状値」が16.9%となっていますが、この調査のあり方が合理的であるのか疑問です。「人権尊重のまちづくり」、「進められている」及び「感じる」という、あいまいな用語を用いていることから、測定方法や調査結果があいまいであると思います。
(2)「目標値(2030年度末)」が50%であることが適切であるとする理由が不明です。これを50%にしたところで、侵害された立場の者からすると困った状況に変わりはありません。人権侵害を受けるのは、多くの場合、少数派であるため、結果の値が高くなったとしても人権侵害は発生しているのであるから、高ければ良いというものではありません。
(3)人権の尊重に関する指標を素案のとおり決定した場合、その程度や目標を数値化したという意味で画期的です。人権に関する取組みの考え方・あり方は、東大阪市役所職員の全人格性を現したものです。素案の指標が妥当であると考えた理由について丁寧に説明してください。


●市からの回答

 基本計画の各施策における指標は、施策の実施により発生する効果・成果(アウトカム)を測るものを設定しているため、原案どおりとします


●市の回答に対する私の感想
 東大阪市役所職員が「人権に関する施策の効果・成果(アウトカム)を測定できる」と信じていることが、あり得ないことです。しかも、調査は主観評価です。人権に関する意識の希薄な職員が、何も考えずに計画を策定したとしか思えません。

 この件に関して深掘りしたのが次の記事です。
 この問題が最悪なのは、この問題提起から1年以上経っているにも関わらず、誰も関与しないことだ。


5.外国人と日本人とが暮らしやすいまちだと思う割合

●記載箇所
 分野別/施策NO.2加速するグローバル社会への対応 成果指標(47ページ)
外国人住民と日本人住民がともに暮らしやすいまちだと思う市民の割合

●計画での記述
 「外国人住民と日本人住民がともに暮らしやすいまちだと思う市民の割合」が30%になることを目標とする。

●疑問点
・何故30%ですか?
・主観評価なので、結果があいまいになります。
・その時々の社会事象によって主観は変化します。
・市役所が実施する事業による成果だ、とは言えません。


6.連携協定について

●記載箇所
 分野別/施策NO.3 公民連携によるまちづくりの推進 成果指標(49ページ)
公民連携によるまちづくりの推進 成果指標

●意見
 市役所は、この連携の数だけを成果指標にしています。連携協定が成立した場合、市長と業者が誇らしげに握手を交わす写真が広報誌に載ります。
 市民視線に立てば、実際に、その連携が役に立ったのかどうかが重要です。
 連携したことが広報された場合、その企業の広告になりますが、その後、何も活動をしなければ市民にとって意味はありません。


7.働く場の創出施策の指標として就業率を使用

●記載箇所
 分野別/施策NO.10 多様な働き方と働く場の創出 成果指標(63ページ)
多様な働き方と働く場の創出 成果指標

●意見
 就業率は、ハローワークをはじめ行政施策全体の結果を含めた、社会経済全般の動きの結果を示した指標です。
 雇用創出を招く最も大きい原因は景気です。組織として貢献度が高いのはハローワークです。それに比べれば、市役所の影響は小さいです。
 ハローワークの寄与が大きいにも関わらず、就業率の上昇が市役所の成果であるように振る舞うのはやめてほしいです。

(参考)
 「素案」(現在は削除されている)には、就業率については「(平成27年国勢調査より集計)」と注記されていました。一般論として、就業率は労働力調査が参照されます。
「完成版」では、この注記が削除されたので、資料出所が誤解されます。これは、どうでも良い話ですが、備忘録として書き留めておきました。


8.65歳以上の要介護認定率

●記載箇所
 分野別/施策NO.12 高齢者の活躍と地域における支えあいの推進 成果指標(67ページ)
高齢者の活躍と地域における支えあいの推進 成果指標

●計画での記述
 65歳以上の要介護認定率は、現状値は23.2%(2020年4月)となっています。そして、目標値も、何故か同じ値、23.2%です。

●疑問点
 「市役所は何も改善しません」というメッセージを出している。
 そもそも、この問題に対して、市役所が目標値を設定することに対する妥当性の議論が必要です。なので、介護の問題というよりも、本計画における目標を設定することの編集方針の問題だと思います。


9.危機や災害に強く安心して暮らせるまちであると思う市民の割合


●記載箇所
 分野別/施策NO.17 危機や災害に強く安心して暮らせるまちづくりの推進 成果指標(77ページ)
危機や災害に強く安心して暮らせるまちづくりの推進 成果指標

●計画での記述
 現状値は15.4%、目標値(2030年度)は20%

●意見
 目標年度において、全く危機や災害が無かった場合、逆に、すごく大きな危機や災害があった場合、それによって、市民の意識は大きく変化します。
 このような意識の変化は、市役所だけの事業の成果を反映したものではありません。ゆえに、適切な指標を設定したものではありません。


10.きちんと編集をしていない

●記載箇所
 施策の推進に向けて シティプロモーションの強化 成果指標(87ページ)
シティプロモーションの強化 成果指標

●計画での記述
 「シティプロモーションの強化」の段落に「成果指標」が記載されている。

●パブコメの回答
 基本計画版のパブコメの回答は次のとおりであった。

 「施策の推進に向けて」の施策NO.1~3については、「東大阪市行財政改革プラン2020」と一定の整合性を図りながら構成しているため、指標も施策1~3共通のものとします。


●問題点
 この「パブコメの回答」が意味するのは、
「シティプロモーションの強化」の段落に書かれた「成果指標」は、正しくは、「シティプロモーションの強化」に関するものではなく、「施策の推進に向けて」の施策NO.1~3に関する「成果指標」だ
ということです。
 現状の文章構成では、「シティプロモーションの強化」に関する「成果指標」である、と読んでしまいます。
 パブコメは削除されているため、この関係性が不明になってます。
 私がパブコメで指摘をし、市は回答をしたのですから、そのとおり計画を編集し直すことが適切でした。


11.目標値に対する意見

 施策毎に目標値を設けていますが、多くの目標値においては、実現可能性を考慮せず、精神論だけで推し進めていこうとしています。
 仮に10年後目標値が達成されなかった場合、どうするのでしょうか。
 仮に目標が達成されたとしても、それは、社会・経済の大きな流れの影響が大きく、市役所だけの成果ではありません。
 世の多くの者は民間ですが、民間の経営の発想からすれば、全く考えられない目標の立て方です。目標の実現可能性に、合理的根拠を感じさせません。
 民間企業の事業計画の立案においては合理的根拠が厳しく求められるにも関わらず、役所の計画立案では合理的な積算根拠が存在しない、存在しても公開しない、というのは不当です。
 何故このような空想のような目標値を設けたのか?それは、それを実現させる意図が無いためです。市民の存在は、株主よりも軽いのです。
 市役所の力量ではどうすることもできないにも関わらず、目標値を掲げることは無責任です。
 目標値を提示するのであれば、市の施策を基にした実現可能な値を提示すべきです。


12.行財政改革の推進として選択と集中の方針

 「選択と集中」という文言は「多少の理はあるとしても、非効率な事業については、事業全体を廃止します」というメッセージです。
 行財政改革については、個々の施策毎に丁寧に点検・検証することが望ましく、一概に「選択と集中」(または逆に「多様と分散」)というような方針・考え方を打ち出すことは相応しくありません。
 民間企業ではモノに対しては「選択と集中」はできます。しかしながら、人間にかかわる公共の事業に対して「選択と集中」を適用してはいけません。
 市政の事業全般に対して、少数派排除を意味する「選択と集中」という方針を当初から打ち出すのはやめていただきたい。
 これまでの市政を見ていると、選択や集中は東大阪市役所職員による恣意です。東大阪市花園ラグビー場という趣味・娯楽施設に公的資源を投入しています。この施設は、元々民間の施設でした。なので、元々あった形にする、完全民営化するのが、本来のあり方です。

以上