東大阪市 小中一貫教育 テキスト 夢TRY科 の課題

東大阪市 小中一貫教育

テキスト 夢TRY科・夢トライ科の課題


テキストの表及び裏表紙


夢トライ科の概要

 東大阪市では、2019年(令和元年)度から、全中学校区で「東大阪小中一貫教育」を実施しています。

 総合的な学習の時間のうち年間15時間、市独自のテキスト「未来市民教育 夢TRY科」を使って夢TRY科の学習をします。

 小学3年から中学3年(9年生)まで7年間、このテキストを使い続け、防災、金融、社会保障等を学びます。

 このテキストは東大阪市教育委員会が作成しました。
 教科書検定を受けていません。教科書という呼び方をしておらず、テキストと呼んでいます。

内容は、次のとおり3個のステージで構成されています。

「ステージA ある日のできごとから」は小学校3年生と4年生、
「ステージB 日常生活の中から」は5年生から7年生まで、
「ステージC 社会の動向から」は8年生以上が学習することになります。

ステージA及びB

 各ステージには次の共通したテーマがあります。
1 よりよい社会をきずくために
2 災害へのそなえ
3 生活を支えるしくみ
4 くらしを豊かにするもの

ステージC


課題

1.検証なきテキスト

 このテキストは学校に置いたままであり、家に持ち帰りません。
 なので、保護者がこのテキストの内容を読み、知る機会はありません。

 東大阪市教育委員会だけが作成に関与しているため、テキストの内容の検証・妥当性の評価が独善的になっている可能性があります。

 なお、東大阪市教育委員会には学校の教員も勤務しており、テキスト作成に参画したので、教育委員会としては、内容について特段問題は無い、というスタンスです。

2.ラグビー偏向教育

 本テキストには「夢を追い求めるラグビー」(106ページ。ステージB)という項目があり、ラグビーを礼賛する内容になっています。
 テキストのあらゆる箇所にマスコットキャラクター・トライくんを配置し、「何故ラグビーなのか?」を考えさせない、刷り込み教育となっています。
 保護者が知らない間に、子どもがラグビーファンになっていた、という事態が発生することになります。

 東大阪市においては、実態として、ラグビーは普及してませんし、野球やサッカーの方が人気が高いです。このことは、実際に、東大阪市に住んでみればわかることです。
 このような状況にも関わらず、東大阪市役所は「ラグビーのまち」を標榜し続け、教育委員会はラグビーの普及の実態を無視して、政治や行政に迎合し、東大阪市がラグビーのまちであるかのように子どもを教育しています。

3.学習できるページは少ない

 本テキスト1冊で、小学校3年生から中学校3年生(9年生)まで使います。
 小学校3年生の立場からすればステージCのページは読みませんし、9年生の立場からすればステージAは幼い内容になっています。

4.有名人が一部地域に偏っている

 「夢ひらくプロジェクト」(3ページ)には、東大阪市出身の有名人が3名紹介されていますが、彼らの出身が枚岡、孔舎衙、石切と記され、いずれも旧枚岡市で、旧布施市や旧河内市出身者はいません。下町と山の手との格差がはっきりしてしまいます。下町の者の立場に立ってみれば、望ましい教育の書物とは言えません。
 日常生活には関係の無い分野(早く走ることなど)で偉大な賞を受賞することが望ましいという内容になっています。非日常の世界で名声を得た人物を英雄視する教育のあり方については、異論はあると思います。
※山の手(やまのて)とは、低地にある下町に対して、高台にある地域を指す言葉である。


意見

 私(筆者)はこれまで、東大阪市役所に対して、何故ラグビーのまちなのか?という趣旨の投げかけを何度もしてきました。
 しかしながら、合理的な回答は全くありませんでした。

 もっぱら「ラグビーの聖地だから」、「有名な試合が行われたから」という、ラグビー愛好者にしか分からない回答しかありません。


 また、実態として、東大阪市において、一般市民がラグビー愛好者であるとは言えません。

 そこで得られた確信があります。
 「東大阪市はラグビーのまち」というプロパガンダは、市役所の権力をラグビー愛好者が握ったため引き起こされた、ということです。

 一般市民の立場からすれば、このような標榜を受け入れる必要はありません。

 多くの市民は、ラグビーではなく、他の事が好きなのです。そして、ラグビーを好きになるように公立学校で教育されるのです。

 NHKのテレビ「かんさい熱視線」で見たのですが、東大阪市内の小学校の教師が、子どもに対して、近鉄のラグビー選手を称える授業を行っていました。
 ラグビー選手という英雄がいて、それを教師や子どもが崇拝しているのです。
 この教師は、精神的に自律している大人だとは思えません。

 行政に税金を支払わせ、学校教育をも巻き込んでまで、人工的にラグビー愛好者を作り上げていこうとする市役所のあり方には問題があります。
 スポーツマンを気取っていますが、全く公正ではありません。

 小中一貫教育の導入に際して、自治体独自の特徴を入れ込もうとする場合に、本記事にあるような異論が出て来るということです。


テキストの内容

 以下に、テキスト 未来市民教育 夢TRY科の内容を掲載しておきます。各文に疑問を持ちながら読んでみましょう(教科書検定を受けていないのですから)。

//以下 テキスト引用*********************************************
夢を追い求めるラグビー

(テキストの106ページ)
 私たちにやる気や満足感をあたえ、暮らしを豊かにするものは、人によって、また、暮らしている環境によって異なります。私たちが暮らす東大阪市では、ラグビーがその一つであるといえます。
 東大阪市のラグビー場は、1929年に日本初の専用グラウンドとして開場して以来、全国高校ラグビーフットボール大会が開さいされるなど「ラグビーの聖地」として、全国にそのみりょくを発信してきました。また、2019年ラグビーワールドカップの開さい地となり、東大阪市が世界から注目されることになりました。東大阪市にとってラグビーは世界にアビールできる財産といえます。

夢を追い求めるラグビー 106ページ

(テキストの107ページ)
 世界では、850万人以上の人が定期的にラグビーをしているといわれています。それだけ多くの人を引きつけるみりょくがラグビーにはあるという表れでもあります。東大阪市も、マスコットキャラクターがトライくんであるように、ラグビーというスポーツのもつみりょくやイメージを生かしたまちづくリに取り組んでいます。
 このように、ラグビーが根づいている東大阪市について、みなさんはどう感じますか。周りの人と自まんできることを話してみましょう。
 そして、ラグビーのまちで暮らすみなさんも、ラグビーでボールを追うように、自分の夢を追い求めていきましょう。

夢を追い求めるラグビー 107ページ

//以上 テキスト引用*********************************

 「世界では、850万人以上の人が定期的にラグビーをしている」と書かれてあり、人気があるかのような演出をしています。日本での人気の程度を書いていません。日本ではラグビーは人気はありません。子どもをミスリードさせようという悪意があります。

 「多くの人を引きつけるみりょくがラグビーにはあるという表れ」と書くことによって、「魅力が無いと感じることは少数派」であることを暗示させ、魅力を感じるように誘導しています。

 テキストでは「ラグビーをやろう」とは書いていません。
 ラグビーが一般市民のためのスポーツではないことは、このテキストの著者は知っていたようで、その点は私も同じ意見です。

 ラグビーを盛り上げる。盛り上がっているように思い込ませる。雰囲気を醸成する。
 そんなことに何の意味もありません。意味の無いことを教育することはやめて頂きたい。
 大人になっていく者にとって、主体性の確立が重要なのです。

 ラグビーの普及には、政治も大きな関りを持っています。
 子どもが、教育を通して、政治や行政の道具になっていることは明らかです。