トップアスリート連携事業に対する意見

トップアスリート連携事業に対する意見

東大阪市役所が提案する「トップアスリート連携事業」(2021年2月)は次のとおりです。
市立中学校、日新高等学校の運動部活動指導にトップアスリートを派遣し、高い水準の指導を受けることで生徒のスキルアップに繋げるとともに、合わせて学校教員の長時間労働の軽減を図り、「働き方改革」に繋げていく。また、プロスポーツ選手のセカンドキャリアの確保も目的として実施する。

市立中学校、日新高等学校の運動部活動指導にトップアスリートを派遣し、高い水準の指導を受けることで生徒のスキルアップに繋げるとともに、合わせて学校教員の長時間労働の軽減を図り、「働き方改革」に繋げていく。また、プロスポーツ選手のセカンドキャリアの確保も目的として実施する

(「第2期東大阪市まち・ひと・しごと創生総合戦略」の素案(2021年2月)より)

詳しくは次のリンク先で トップアスリート連携事業 - 経緯(リンク)


これに対して、私(筆者)は、下記のとおり、市役所あて、市民として意見を提出しました。


「トップアスリート連携事業」に対する意見

 「トップアスリート連携事業」を削除してください。

理由

1.市政において、「プロスポーツ選手のセカンドキャリアの確保も目的として実施する」必要性はありません。

2.文化部などの生徒の立場からすれば、公共の予算・教育資源の配賦が不平等であり、教育の機会均等に反しています。

3.本事業は、プロが特定の競技を運動部の生徒に指導するという、教育内容まで規定しています。
  本来ならば、自由度の高い教育資源を各学校に公正に配賦すべきであり、教育内容は校長の裁量で決めるべきです。

4.本事業は、野田市長の選挙公約でした。政治です。
  教育は、政治である市長の意向から独立していなければなりません。
  今後、政治傾向の異なる市長が選挙で選ばれた場合、本事業の継続性に悪影響が出ます。

5.本事業は政治であり、民間の事業者である近鉄ライナーズが関与していることから、本事業を広告として取り扱うことは、公平・中立であるべき公共の事業として望ましくありません。

6.「高校ラグビー全国大会で花園を目指す」という目標は、生徒の身体の発育に最適化していません。
  現実問題として実現が極めて困難であるため、目標として掲げることは不適切です。生徒の立場からみれば、「実現への可能性が低い事業を計画にしても良い」という非合理的な考えを学習してしまうことになります。
  このような目標を、(校長ではなく)教育委員会が設けたり表明したりすることは不適切です。

7.本事業を実施しない中学校の立場からすれば、本事業に係る教育資源の配賦を受けないことになり、実施する中学校と実施しない中学校の間で格差が生じ、不公平です。
  市役所から多くの教育資源の配賦を受けることは、学校にとっては欲するところですが、その教育内容は行政や教育委員会が規定してしまっており、校長に裁量の余地が無いことから、教育制度として不適切です。
  本事業を実施しない中学校にも、実施した場合と同額の、自由に使える予算を配賦すべきです。そうしないと、行政や教育委員会が、学校の教育内容を操作・支配する形になってしまいます。

8.子どもとアスリートでは、体格・体力や、運動をする目的などが大きく異なります。「高い水準」とは、プロ用競技であって、10歳代の子ども用に最適化されていません。
  子どもにとっては、一般的な身体の発育を促す指導が必要なのであって、ラグビーに特化したプロの大人による「高い水準」の指導は必要ではありません。
  正規教員の人数を増やすことや、正規教員の研修機会を増やすなどにより、個々の生徒に応じた適正水準の指導を行うことが適切だと思われます。

9.日新高校では、2020年9月に本事業を試行実施したものの、2021年度の入学志願者数が減少し定員割れをしました。このことを考えると、本事業は、子どもにとって特段の魅力は無く、むしろ逆効果になっている可能性もあると思います。
  高校生になるのですから、ラグビーという非日常の世界に憧れる子どもは減ると思います。子どもであっても、自分の将来について、現実的に考えるものです。「高校ラグビー全国大会で花園を目指す」という目標は、リスクが高すぎるし、意味が無い、ということぐらい子どもでもわかります。

10.運動部だけの施策ですので、働き方改革の恩恵を受ける部活顧問教員に偏りが生じます。
  働き方改革は、正規教員を適正に配置するなど、学校として望ましい体制の構築により実現すべきです。
  本事業は、一部の学生がプロから特定の運動技能の指導を受けるという、特殊な学習形態であるため、この事業の実施が適正な学校運営であるとは言えません。
  ゆえに、本事業の目的に、働き方改革を設定することは不適切です。

11.「東大阪市立学校に係る部活動の方針」(平成31年3月東大阪市教育委員会)には、「校長は、本方針に則り、毎年度、「学校の部活動に係る活動方針」を策定し、学校のHPへの掲載により公表する」とあります。
  部活動は、実施の是非を含め、年度毎に、校長の権限で行うべきであり、行政が定める計画等に基づくべきではありません。
  仮に本事業が計画等に記載されたとしても、それは無効です。無効となる文言を本戦略に盛り込むべきではありません。

以上はパブコメの意見 ****

上記意見に対して、市からの回答(2021年4月)は、次のとおりでした。

本市の各学校においては、地域の様子や実態等に応じて、地域環境の特徴や特性を生かしながら、地域をはじめ、企業・大学などと連携し、地域の伝統、モノづくりの先端技術や高度な学問に接する取り組みや、国際理解教育を学ぶ取り組みなどを実施し、子どもたちが生きた知識を身につけ、学習に興味を持つ環境づくりを進めています。
また、スポーツのまちづくりには多様な視点があり、様々な主体が連携して取組を進める必要があります。
いただきましたご意見は、今後の施策立案・検討の参考とさせていただきます。


以上

以下参考リンク